オダックス埼玉のアタック日本海は 600km のブルべでも難易度が低いブルべだと思う。 理由は、いくつかあるが小さいアップダウンがあるにしても途中国道 17 号の三国トンネル標高 1,083m という山を往路と復路で一回づつ通過するのが最大の(文字通り)山場で、それ以外は平地が多いことが大きいと思う。 また、イナカ道が多く信号も少ないので平均速度も上げられやすい、フタケタ国道なのでゲキサカ部分はなくツラいけど漕いでいればてっぺんに到達できる、どうしてもダメなら新幹線で帰ってきやすいなど初めて 600km ブルべに参加するならうってつけのルートでもある。
当方は過去に何度か出走し、リタイヤし( 2018 BRM609埼玉600 アタック日本海で吐いてスタートから約 370km でリタイヤ)たこともある。 他の 600km ブルべに出走したこともあるが貧脚なので、毎回エラい目を見ているので、知っている範囲あるいは走ったことがある範囲で一番イージーなオダックス埼玉のアタック日本海に出走している。 アタック日本海を完走できなくなったら、 600km ブルべからは引退するのに適当な時期だろうと考えている。
当方は完走できるのか、リタイヤするのか、完走できたとしてもラクだったのか、トラブルまみれになったのか、その辺を記述していく。
最近は 200km ~ 600km すべてでほぼ同じ装備で走行している。 写真は三国トンネルを抜けておよそ 9km ほどの場所にある国土交通省二居除雪ステーションの隣にあるパーキング・トイレの前で撮影した。 ホイールは前輪はディープリムな WH-RS81-C50-CL だ。 後輪はパワータップを付けたホイールで出力を上げ過ぎず、下げ過ぎずのコントロール用につけている。 前照灯は計 3 個、尾灯は計 3 個とりつけてある。
ギアは前が 48-36-26 、後ろが 34-11 と最小ギア比は 0.765 で、最大ギア比は 4.364 と 5.7 倍ズーム?相当だ。 リカンベント自転車は、体重を使った乗り方であるところのいわゆるダンシングというか立ち漕ぎなどができない。 そのため、速度 0 からのスタート加速や急加速ならびに重力加速度に対抗する登り坂に大変弱い。 加速がトロいのはブルべでは容認されるが、登り坂を上れないのはできるだけ避けたいので、クランクをクルクル回して上れるように最小ギア比をとても小さくしているのだ。 またチェーンラインが大変長いので、インナートップとかアウターローのようないわゆるたすき掛けを考慮する必要がない。 すなわち、基本的には三段変速(前のギアが三枚だからね)で、後ろで微調整という感じだ。 平地を走るときは前をアウターにするわけで、スタートでは一番大きいギアに入れておいて速度が乗ってきたらだんだん小さいギアに入れて走ればよい。 あらかじめこの先が登り坂であることがわかるときは前を一番小さいギアにしておけばいいわけで、ちょっとした平地なら後ろを小さいギアにすればそこそこの速度までは前を変えずに済む。
気温については 5 月はもう暑いときもあり、また高所を通過するので寒暖の差に対応する必要がある。 実際今回は 9 ℃~ 34 ℃と 25 ℃もの差があった。 多少寒いくらいは高いところから下れば下界は暖かいのでそう心配することはないかもしれない。
コースはスタート地点のニューサンピア埼玉おごせ第4駐車場を出発すると越生ー小川ー花園ー前橋ー沼田ー越後湯沢ー南魚沼ー加茂ー新潟ー長岡ー六日町ー越後湯沢ー渋川ー高崎ー花園ー小川ー越生」という感じでざっくり新潟まで行って帰ってくるという往復 600km のコースだ。 途中に国道 17 号で越える三国峠(三国トンネル、標高 1,083m )があって、往路と復路の一大障害だがこれさえやっつければそれほど厳しくもない長いブルべともいえる。 むろん、道のりが長いなら走っている時間も長く、昼も夜も走ることになる。 当方は遅いので宿泊施設などに泊ったことはない。 限界まで走ってダメだと思ったら道路わきで気絶したように休憩を少しとって走行を続けるのだ。 それでやっと完走できるのだから難易度が低いとは言いつつも 600km はそれだけ完走は困難だと思う。
当方の場合、リカンベント自転車に乗るようになって遅くはなったが身体への負担はかなり減ったと感じている。 いわゆる普通の自転車であると手のひらの皮むけに始まり、サドル後縁の部分が当たる尻の皮膚が擦り切れる感じ(その後の体液(血液はすぐ止まるがリンパ液?がなかなか止まらない)の漏出)、首の筋肉痛、腕(上腕三頭筋)の筋肉痛、腰の筋肉痛、ヒザの腱や皿の表面痛などなどどうすればいいのよと思うくらいアチコチが破れたり痛んだりする。 肘部管症候群になったこともある。 それが、リカンベント自転車だと脚でペダルを前にけり出した反力で腰がシートに押し付けられて自転車を降りたときに腰を押すと痛むくらいで上に書いたあちこちの痛みや損傷は発生しない。 600km 走ると走行中にモモの筋肉が筋肉痛になることがあるがそれは普通の自転車もリカンベント自転車も変わらなくて、コーラやコーヒーを飲むと収まるところからカフェインで改善がみられる。 まぁ、とにかく普通の自転車の姿勢は長距離乗るには当方にとってかなり無理があるのでリカンベント自転車のラクさは弱点を補って余りあるものであると感じている。 可能性として、ママチャリか、あるいは TT バイクのように DH バーを付けたときにはリカンベント自転車の良さに近づくかもしれないが、今はリカンベント自転車の快適さを享受したいと考えている。
ハッキリ言って当方は遅い。 またリカンベント自転車のペースはいわゆる普通の自転車とは大きく違う。 よく登り坂で「足をつきたくない病」にかかる人がいるが私はどこででも「足をつきたくない病」にかかっている。 理由は、当方のリカンベント自転車の写真を見てわかる通りクランクが地上 1m くらいにある。 普通の自転車は地上 20cm くらいだろうか。 赤信号で足を地面について停止していたときに、青信号になったら当然足をペダルに乗せて力を込めて自転車を前に進めるわけだ。 ここで片足はビンディングでペダルにくっついているとして、地面からの足は普通の自転車なら 20cm くらいだがリカンベント自転車の場合は 1m 位まで振り上げないといけないわけだ。 しかも、膝から下を曲げれば良いとかいうレベルでなく、脚まるごと 10kg 以上あるかも?なのを蹴り上げるわけよ。 10 回足ついたら 10 回それがあり、 100 回足ついたら 100 回ね。 都市部では信号峠とかいうくらい加減速で苦しんでいる人がいるけど、リカンベント自転車は加減速に弱いだけでなく停車から発進も弱いのはこういう理由なのだ。 イナカ道に向くという理由はこの停止と発進が少ないことからで停止しないで走り続けるなら大変楽に走れると思う。 こんなわけで、当方はマイペースでゆっくり走る。 しかし、イソップ寓話の『ウサギとカメ』にもあるように止まらないで走り続けることはウサギよりも早いのだ。 それはブルべの経験で知ったことでもある。
今回の最低目標は完走。 毎回、夜中から翌朝にかけて吐き気を催すようになっているのでカルシウムドーピングして改善を実験してみた。 過去にやってみたことはあるのだが効いた気はしなかった。 本当に効果がないのか再試験という感じで試してみた。
結果は出走から約 39 時間でゴールと最も遅かった。 また、 6 回もマーライオンのマネをしてしまい吐き気は制御できなかった。 最初の嘔吐からゴール(約 22 時間)や自宅へ帰宅しても食べられなくて、 30 時間くらい飲み食いできなくて内科系?内臓関係?に最高にダメージの大きいブルべでもあった。
途中から空腹感もなくのどの渇きもなく、ただ吐き気のみがあってツラかった。 脚はそこそこに動くのだが、パワーを出すと少し後に急に心拍が上がって気分が極端に悪くなるので、低いパワーでゴールを目指したのだった。 おそらく低血糖による頻拍だったのではないかと想像している。
車検とか 05:00 発の方々が続々スタートしていった。
受付とか車検とか。
2023/05/13-05:24ほぼ最後尾でスタートしたが、後からスタートの方が結構な速度差で当方を抜いていく。
2023/05/13-06:02それなりの速度で走れていて前橋付近でトイレを探しつつ走っていたら発見したので河川敷のグラウンド脇のトイレに駆け込んだ。
2023/05/13-08:54遠くの方にライダーが見えたが、追いつくことなくチギられた。
2023/05/13-09:14全体的に薄曇りで当方にとっては比較的よい天気だ。 個人的に好みの天気は曇りが一番、次に小雨だ。 ピーカンは雨並みにうれしくなかったりする。 ドラキュラではないが、日光には弱いので曇っているとうれしい。 この先の山を越えて向こう側に行くのだろうなと漠然と考えながら進行した。
2023/05/13-09:31暑いなと思いつつも、到着できた。
2023/05/13-10:32それなりにおなかもすいて、のども乾いていたのだろう、結構な補給をした。
2023/05/13-10:39何か焦げ臭い感じがしてきたと思ったら、遠くに赤い警告灯?が見え物々しい雰囲気の中オートバイの集団と一緒に火災現場の脇を通過した。
2023/05/13-11:28気温は 30 ℃を超えていて大変暑かった。 へー、群馬サイクルスポーツセンターってここから入るんだーと、初めて看板を見た気がした。 何度もここを通っているのに気づかないとは、当方の目がフシアナであることがよくわかる。
2023/05/13-11:42ここから高度が上がると徐々に気温がさがるわけだがそれでもかなり暑く、座って休憩したくなるのもよくわかった。
2023/05/13-12:43標高 1,087m に到達し、気温はおよそ 12 ℃で涼しく走れるが、また下界に下ると暑くなることが予想された。 写真の新三国トンネルは 2022 年に完成したトンネルで、旧トンネルはもう使わないようだ。 てっきり旧トンネルは上り線、新トンネルは下り線として使うのかと思っていたよ。 改修するのは高くつくのかな。 一方を回収しているときには現在の一車線づつの対向で使って、普段は二つのトンネルを使えば良いのにと思った次第。
2023/05/13-12:50トンネルを抜け、 10km 近く下ったところに二居除雪ステーションの隣にあるパーキングに併設されているトイレによく寄る。 この辺の下りで 70km/h も出て、リカンベント自転車とディープリムの効果がよくわかるところだ。
2023/05/13-13:122023/05/13-15:22
2023/05/13-15:30
2023/05/13-17:50
もうすぐ PC4 というところで一人のライダーの後ろを走っていた。
2023/05/13-19:42前の自転車に近接して後ろを走っていたら、やっちまった!
線路をくぐる道路の上り坂の途中に穴があった。 おそらくブルべでは初めてのリム打ちパンクだ。 普通の自転車では穴があった時には瞬間的にジャンプして自転車が穴に落ちないように飛び越えるか、落ちたとしても重さがかからないように抜重するのだ。 しかし、リカンベント自転車だとシートに寄りかかってというか寝ているような感じなので抜重できない。 そこで、前輪が穴に落ちて穴の縁の角にあたって、ガツン!ぷしゅ~って感じ。 クリンチャーな自転車に乗っている以上避けられないパンクであった。 これが、チューブレスとかチューブラーだとパンクしないで済んだかもしれぬ。 ってことで、チューブ交換して再出発した。
2023/05/13-19:53パンクを直してちょっと走れば PC4 で折り返しだ。 パンク修理のロス時間も入れてスタートから 14 時間半で 290km は悪くないペースだ。
2023/05/13-20:27当方が到着したときに、 PC を出ていくライダー。
2023/05/13-20:34いつもより少し早いが、キモチ悪くなって食欲が失せ始めていたので補給も少なめにした。 ここでカフェインドープをした。 夜間の眠気覚ましに飲んで明け方まで頑張れるところまで行くのだ。
2023/05/13-20:35夜であることと、出走から 15 時間も経っているし、 300km もかなただし、同じ道を同じ方向に走っているので、あまりほかのブルべライダーと遭遇しない。 それでも時折抜かれることがあると、道をひどく間違っているわけじゃないと安心するのだ。
2023/05/13-21:01キモチ悪いなーとずっと感じていたがスタートから 17 時間とちょっと……、ついにマーライオンのマネをしてしまった。 本当は写真もあるが誰の利益にもならないので時刻だけを記録としておく。 画像は「いらすとや」さんのマーライオンのイラストだ。
ブルべ中の嘔吐は2018 BRM609埼玉600 アタック日本海で吐いてスタートから約 370km でリタイヤした時以来の二回目だ。 その後も吐き気に襲われて吐かないで済んでいたが、ついに二回目だ。 リタイヤをちょっと考えたが、よく考えると輪行袋は持っているものの普通の自転車用だしたぶん入りきらないと思った。 つまり、リカンベント自転車で出走したらリタイヤできないのだ(笑) ということで、従来通りなら夜明けくらいには吐き気は収まるので、速度を落として走り続けた。
2023/05/13-23:14吐いた後もユルユルと走り、 PC5 に到着した。
2023/05/13-23:39むかつき具合は改善せず、 PC では水を買って飲んだ。 この辺から雨模様であまり寒くはないが、吐き気という気持ちの悪い状態で走行し続けた。 吐き気がなかったら気温は高くなく、比較的気分よく走れたのに残念だった。
2023/05/13-23:46PC を出発してしばらくしたら、また吐いちゃったよ。 胃の中には水と胃液しかないので透明なのが出たね。 雨で路面がぬれていたのでどれだけ吐いたかちょっとわからなかった。
2023/05/14-00:34のそのそ走っていても止まっているよりはマシで PC に到着できた。
2023/05/14-01:51ちょうどバッテリが切れかかってきていたので単三電池を買って PC 通過のしるしとした。 もうね、吐き気ばかりで飲めないし食えないなのよねー。 しかもここから 130km ほどは PC の間が空くわけで間に三国トンネルという最後の大物が控えているのだ。 ダメダメになっている内臓を抱えて完走の危機を考えつつ、リタイヤできないからタイムアウトになっても走って帰るしかないのよねーと PC を出たのだった。
2023/05/14-02:01まだ、胃に水が残っていたようでまた吐いた。
2023/05/14-02:28
キモチ悪いのを何とかやり過ごせないものかと考えていたがダメなものはダメだ。 固形物もなくどこから水分がでてくるのかと思ったが、唾液とか胃液なのだろうかという感じ。
2023/05/14-04:50オシッコ行きたくなったので道の駅に寄ることにした。
2023/05/14-07:07ついでに飲まないよりはマシじゃないか、飲んだら少しは下の方へ流れて行ってくれるのではないか、このままだと脱水状態でヤバくね?などイロイロ考えてゆっくり水分補給にチャレンジだ。 買ってすぐに飲んだわけではなく、走行しながら少しづつ飲んでみた。 吐き気は弱かったがないわけじゃなく、これまでも急にこみ上げてきてということだったので、いつ吐くかはわからなかった。
2023/05/14-07:092023/05/14-09:06
進むペースから 13 時くらいに三国トンネル通過できるか? 13 時トンネル通過なら残り 7 時間で 100km ちょっとだからかなり完走の目が出てくることが予想される。 なんてことを考えながらできる限界で走っていた。
2023/05/14-09:332023/05/14-09:59
往路でも寄った二居のトイレだ。
2023/05/14-10:062023/05/14-10:22
2023/05/14-10:23
ペースが大変落ちていてバンバン抜かれた。 しかも足(脚じゃなくて足首より先の部分)が痛くて対処に自転車を降りて押した。 多少足の痛みがいえたらまた自転車に乗って走った。
2023/05/14-10:30トンネル(登りの終わり)まであと 2km の地点で急に動悸がした。 記憶がおぼろげだが、自転車に乗って 1km 進んだら、自転車を押して 200m 歩くみたいな感じのペースで押したり乗ったりを繰り返した。
2023/05/14-10:52当方は心が弱いので終わりが見えないところでは元気がなくてパワーも出ない。 しかし、スノーシェッドが見えるということはトンネルまであと 2km と終わりが見えた。 すると脚が動くんだよね。 でも、不自然に動悸がして気分が悪くなったので降りて休憩した。 5 分程度で動悸は収まった。
2023/05/14-11:46
登りの途中で吐き気が少ないときに、少しだけ食べてポカリスエットを飲んでいたんだけど、また吐いちゃった。 今度はハッキリ色がついていたからおそらく胆汁の色と思われ、幽門部よりも向こう側の十二指腸のほうからの分も吐いている感じ。 もしかすると暗いうちから胆汁を含んで吐いていたかも。
2023/05/14-11:48まぁとにかく速度 0 よりは遅くとも進むことを優先して歩道もあることだしと押し歩きしてスノーシェッドを抜けて、また自転車にまたがって進行した。 そこで停止していたら永遠にゴールにたどり着けないからね。 少しでも進んでいれば規定時間に間に合わなくてもいつかはゴールに到着できるから~。 とりあえず予想の 13 時よりは一時間も早くトンネルに到着したので、完走できそうな気がした。
2023/05/14-11:572023/05/14-14:10
スノーシェッド手前で体験したパワーを出すと急に動悸が激しくなるというのをさらに二回繰り返して、最後の PC にたどり着いた。 依然として吐き気は収まっておらず、最後にちゃんと補給できてからは 20 時間以上が経過していた。
2023/05/14-15:09ダメ元でジェルを購入し飲んでみた。
2023/05/14-15:20ジェルには色はついていなかったようだ。 飲んでから二時間してやっぱり吐いちゃった。
2023/05/14-17:50ペースはどんどん落ちていると思ったが、それでもゴールには間に合いそうだと自転車をひたすら進めた。
2023/05/14-17:572023/05/14-18:59
みんな元気ですなーと、キモチ悪い内臓を抱えてのろのろと自転車を漕いでいる当方を抜いていくブルべライダーを見送っていた。
2023/05/14-19:02そんなこんなでもスタートから約 39 時間弱、過去の 600km のブルべでは最遅のゴールとなった。 飲み物とかお菓子とか用意してくれていたが、もうね廃人レベルで何も飲めない食べられない状態だったのよ。 でも、不思議と歩いたり、自転車をクルマに積んだりとか、着替えたりとか普通にできたんだよね~
2023/05/14-20:52結果的には一時間ちょっとの時間を残してゴールしたわけだが、余裕率たったの 3% だ。 トラブル一発でタイムアウトでもある。 何とか時間内にゴールできたので、完走認定ではあるけれど本当にボロボロだった。 直後はもうブルべは引退しようと思っていたくらいだ。
着替えて、自転車をクルマに積んでの帰宅の道程も記録しておく。 当方の場合、ゴールから自宅までは約 120km ほどの道のりなので、圏央道を通って神奈川県南部まで帰るのだ。 どんな感じで眠くなったり起きたりして帰ったかメモしておくことで将来の自分自身の参考になると期待する。 普段カフェイン断ちをしていて、ブルべ中にあまり眠くならないように夜コーラを飲んで目を覚ますようにしているから、帰りの道中で仮眠をとろうと考えている関係上朝からカフェインはとっていない。 もっとも今回はゲロゲロでカフェインを摂りたくとも摂れなかったわけだが……
ざっと流れとしては下のような感じだった。
21:20 駐車場出発 21:22 幻覚確認 21:27 目のショボつき確認 21:34 眠気認知 21:50 幻覚増悪 21:55 高速突入 22:04 狭山 PA 到着→仮眠 23:30 覚醒 00:00 狭山 PA 出発 01:00 厚木 PA 到着→仮眠 03:30 覚醒 03:50 厚木 PA 出発 04:30 自宅着→就寝 07:30 覚醒 08:00 起床→シャワー他
ゴールしてから 30 分ほどかけて着替えや自転車の積み込みを終えた。 ニューサンピア埼玉おごせ約 100km かなたの自宅に向かって出発だ。 ブルべのために自宅で起床してここまで来てブルべで走ってゴールしてとざっと 43 時間くらい覚醒していると思われる。 途中で寝なくちゃいけないことになるハズだがちゃんと高速道路のサービスリアまで持つかそういったところをメモするわけだ。
まずは圏央道に乗ること。 そして狭山日高インターチェンジのすぐ先にある狭山パーキングエリア(約 20km 先)を目指すのだ。 しかし、出発して 2 分で早くも幻覚を認識した。 これは入眠時幻覚と呼ばれるタイプの幻覚であろうと思われる。 ブルべで身体はまだ起きているし、走行のための視覚と身体を動かす神経回路はまだ起きているが脳が寝かかっていると思われる。 経験ではこの幻覚を認識してから 20 分程度で耐えがたい眠気が来ることがわかっている。 かといって、自動車を運転している以上暴走行為をするわけにもいかず、眠気が来る時をなるべく遅らせるべく運転しながら両手で頬を叩いたり、モモを叩いたり、拍手したりなど身体をゆするなどして動かした。
身体を動かしても、まばたきがしづらくなってきた。 いわゆる目がしょぼしょぼしてきたという感じだ。 まだ眠気は感じないが、遠くの建物が人の顔に見えたり、運転席のすぐ外を人が脚で走っている気配を感じたりと明らかに認知に異常を感じていた。 スピードメーターを見つつ前方不注意にならないようにして幻覚に惑わされないよう高速道路を目指した。
そして、運転を始めて 14 分後眠気を感じた。 いよいよここからが戦いの本番だ。 目を閉じると眠ってしまうだろうから、まだちょっと眠いなぁくらいの程度を維持できるよう運転に支障のない範囲で脳に刺激を与えるべく、身体を叩いたりこすったりして刺激した。 「オレは狭山パーキングエリアまでたどり着けたら仮眠するんだ」と、声に出して独り言を述べてフラグを立てるようなことをしてみた。 もちろん、今こうやって記述しているのだからフラグはちゃんと折っておいたわけだが……。
そうはいっても幻覚はどんどんひどくなった。 幸いにして、センターラインはちゃんと見えているし信号の色もわかる。 黄と赤では停止し、青では進行してもよいということもわかる。 街灯の周りに巨大な生物、それは犬だったりクモだったりサボテンだったりがくっついていたりして、露骨に幻覚であることがわかることが幸いし、運転自体は継続できていた。
眠気を感じて約 20 分後やっと高速道路に入れた。 こういうとき ETC は何もすることがないので便利だ。 しかし、良い点も悪い点もある。 現金払いなら高速道路のキップを受け取るので窓を開ける→車を寄せる→車を止める→キップを受け取る→車を発進させる→窓を閉める→キップをバイザーに差し込むなどの一連のちょっと違う動きができるので、面倒な反面少し覚醒レベルを上げることが期待される。 この現金払いは時間のロス(と言っても数十秒程度だろう)が、時間の進行とともに幻覚の増悪があるかもしれないという心配だ。 ETC なら時間のロスはないので時間の進行による幻覚の増悪はないかもしれないが、運転している行為にあまり変わったことがないため意識には刺激がなくて覚醒レベルが上がらない→眠気の進行が遅らせられないというデメリットもありそうだ。 どちらも仮説レベルではあるが、早く車を止めて眠りたいという気持ちからは ETC に軍配があがるだろう。
高速道路に乗って約 10 分、だいぶ意識レベルが下がっていて一般道と変わらないような速度で走りやっとパーキングエリアに到着した。 車を止めて、ドアをロックしたら運転席から助手席に突っ伏して目を閉じたら気絶した。
この辺からはだいたいの時刻だ。 突っ伏して眠ったので肩とか腕がしびれて目が覚めた。 しばらくもぞもぞした後、トイレに行ってオシッコしてから、顔を洗い、脚が疲れているななどと思いながら少し歩いたり、腕を回して体操もどきをすると少しだけ目が覚めた感じがして眠気がとんだ気がした。
日付が変わるころ狭山パーキングエリアを出発した。 道路は空いている。 しかし、当方の精神は疲労していたので、アクセルを踏む力も減って 50km/h ~ 60km/h くらいで進行し、普通は 30 分程度で到着できる厚木パーキングエリアまで約 1 時間をかけて到着することになった。
厚木パーキングエリアも空いていた。 少し精神的余裕があったので助手席に移動してシートを少し倒して、脚をあげて眠ることができた。
何度か目を覚まして、また眠りにつくというサイクルを繰り返して、もぞもぞしていたが一時間もかからずに帰宅できるところにいるので意を決して出発することにした。 トイレに行って、顔を洗って、体操というか腕を振り回し、脚を動かして少し目を覚まして、身体も覚醒させた。
相変わらず元気がなくて、アクセルの踏みも甘く速度が低いままだったが、車も少なく速度が遅いことによる迷惑もかけることなく帰宅した。
自転車とかは車に置いたままで、金目の物と自転車衣装をもって車を降りた。 帰宅したら、まずはシャワーを浴びた。 特段どこかがしみることもなく、疲労した脚でバスタブの縁を跨いだりがちょっと辛かった。 シャワーから出たら、自転車衣装や服だとかタオルだとか全部ひとまとめに洗濯機に放り込んで洗剤入れて寝た。
洗濯終了を示す洗濯機の音では目が覚めなかった。 たぶん二時間くらい眠ったので目が覚めたのだと思われた。
目が覚めたら、空腹なようなそうでないようなという感じだったので、恐る恐る少しづつカルピスを飲んでみた。 吐き気はおさまっていた気がした。 クルマを降りるときに持ち出したブルべ中に買ったはいいが食べられなかったオニギリがあったのでよく噛んで食べてみた。 一時間しても悪心も起こらず、嘔吐もなく、かといって空腹なようなそうでないようなという感じが継続したのでうどんを食べた。 およそ 36 時間ぶりくらいに食事ができるようになった瞬間だった。
食事は昼過ぎからは普通の食生活に戻して、特に異常もなく過ごした。 空腹感は夕方くらいから発生するようになった。 脚は翌日以降は疲労がどんどん抜けて金曜日くらいにおおむね復調した感じだ。
今回のブルべは過去に経験した中では最もツラいブルべだった。 初めてのブルべでは食べ物どころか飲み物ものどを通らずまったく補給ができなかった。 当時はコンビニで買い物をするという方式ではなく主催者がハンコを押してくれていたので飲み食いしなくても走り切れるならそれこそブルべの出走費用だけで済んだともいえる。 その後、補給ができるようになり、一時期はブルべ中に焼肉もいけるくらいとか思っていた時期が俺にもあった(笑)が、トシのせいか最近は 400km と 600km のブルべでは夜半くらいから吐き気に苦しむようになった。 前回吐いた時は心が折れてリタイヤしたが、今回はリカンベント自転車に乗っていたのでリタイヤできないことがわかって走り切ることにしたのだ。 もうね、どうしたらこの吐き気を低減させることができるのか、そもそも原因はなんなのかがわからずアレコレ試している。 先輩によると本人は経験したことがないそうだが、同じ理由で引退した人たちがいるとのことで解決できればと引き続き考えていきたいと思う。
本番に向けてトレーニングの量はどうだったか、各種仕組みで見てみよう。 一応、おおむね良好な状態で「BRM513 埼玉 600 アタック日本海」当日 8/6 を迎えられたというように見える。
まず、 Golden Cheetah で出力した上のグラフを見てくれ。 灰色の棒が各日のトレーニングとしての TSS のグラフだ。 一番右の長いのは「BRM513 埼玉 600 アタック日本海」当日の疲労度で 639TSS だ。 水色の線が CTL で戦闘力となる値でこれが高いと強いということで比較的良好な 94 程度の値だった。 また、黄色の線 TSB が蓄積疲労度でこの値が大きいほど疲労が抜けていることになるわけで、前日位からマイナスを脱して当日はプラスにまでもっていっていた。 そんなわけで脚は調子良いハズだった。
体調はおおむねよろしい状態だったわけで、実際に走ってどうだったかを見てみよう。 下のグラフは出力の経過で横軸は時間。
パンクで 30 分くらい止まっていたが、折り返しであるところの PC4 (290km) まで 14 時間半とおおむね 20km/h を維持していた。 だいたい 100W ~ 150W くらいで走行できていて、ペースも悪くなかった。
しかし、 PC4 を出てから吐き気があって出力を落として走行していたが、 PC5 ( 342km ) の手前、おそらくスタートから 330km ~ 335km 付近でついに吐いてしまった。 グラフでははっきり見える停止時間はなく、信号の待ち時間と同じくらいだたと言えよう。 出力を落としたまま走った。
出力をあげようもなく、 PC6 ( 373km ) まで約 30km しかないが、約 2 時間かかったのも仕方ないことと思われる。 そう PC5 を出て 30 分ちょっと経ってまた吐いてしまった。 もう飲んだ水しかないから、胃洗浄みたいな感じだなと思った。 吐いた後ののどのイガイガも少なかった。
PC6 を出れば、あとは一山越えて、 PC7 ( 530km ) まで 156km (ゴールまでは約 230km )で、前半と同じペースならおよそ 8 時間の行程だ。 しかし内臓が全然だめだと、もうどうしようもないね。 リタイヤできないってことは吐こうが吐くまいが、タイムアウトしても電車に乗れないのでとにかく自力でゴールまでたどり着かなくてはならないことでもある。 そんなわけで低い出力のままヘコヘコこいで、おそらく 380km 地点、 410km 地点あたりで吐きながら進行した。 途中道の駅に寄って少しでも水分が身体に入ればとポカリスエットにチャレンジしてみたが、おそらく 470km (三国トンネルから日本海側 2km )地点でまた吐いて、飲んだポカリスエットのほとんどは無駄になった。 どれくらい腸のほうへ流れていったか分からないがかなりの部分を戻したと言えよう。
登り坂でどんどん遅くなっている様子は下のグラフでも顕著に見て取れる。 下のグラフは速度(灰色の影)と高度(緑線)と心拍数(赤線)で、横軸は時間だ。 つまり、緑線の左の山の左側の斜面は直線なわけでこれは一定の上昇速度を保って登っているからだ。 この傾斜が垂直に近いほど速く登っていることをしめしているのだけれど、右の山をみるとふもとのほうの傾斜もほめられたものではないけれど、登って高度がますにつれてどんどん水平に近づいて速度が落ちていることが見て取れる。 頂上手前で速度が出ていないのはおそらく計測限界以下で押しているときなのだろう。 だが、永遠に到達できないかと思うてっぺんの三国トンネルもとにかく遅くても進んでりゃぁいつかは着くわけで、当初予測よりも一時間早く到達して 10 時間を残して長くキツい登り抜きで 130km くらいとくれば、時間内完走も見えてくるってものだ。
結局 PC7 ( 530km ) まで 13 時間かかって到着して平均速度 12km/h ととんでもなく遅かったことがわかる。 残り 70㎞ を 7 時間だから 10km/h より早ければと思ったが、脚は動くのだけど内科的問題で心臓の動きが怪しく実際のところ都市部の信号を考え、またどんどん速度が遅くなっていることも考えると、そう時間に余裕があるとは思えなかった。 吐き気は依然としてあったが少しマシになっていた気がしたので最後の頼みの綱としてジェルを飲んでみた。 のど越しは悪くなかったし、すぐには吐き気は強くならなかったが、結局二時間半後に吐いてしまった。 それでもゴール近くのアップダウンを考えて少しでも平地で速度を稼ぎたいと走った結果はおよそ 70km を 5 時間半ということでこの区間の平均速度約 12.7km/h でゴールできた。
内臓以外のダメージは脚の疲労、腰がすこーし圧迫(前にけり出すので反力で腰がシートに押し付けられる)の影響でちょっと痛いかなというところでゲロゲロで補給できなくてパワーが出せないという状況からトータルでは少ないダメージで済んだと言えよう。
オダックス埼玉の方々、同じブルべを走って声をかけてくださったライダーの皆様に感謝する。
途中ではもうブルべは引退したいと思うくらいツラかった。 吐き気問題が解決すれば、まだリカンベントでならダメージ少なく完走できそうに思う。 質問・意見・感想も歓迎だ。
当方(SHIBATA Akira)は, 本サイトをご利用の際に起きるかもしれない不利益に対し, 一切責任を負いません.